大阪地方裁判所 昭和54年(ヨ)3307号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【判旨】
一本件仮処分申請が、申請人らにおいて国立大学である被申請人大学の学生であるとの地位にもとづき、右学生と国立大学との間の法律関係が、私法上の市民債権契約関係にあり、かつ、被申請人は国から独立して自治的人格のある権利能力なき社団ないし財団としての実体を有することを理由とし、被申請人に対し私法上の契約にもとづく義務の履行請求として、受教育地の確認といわゆる上八学舎での教育の履行請求を本案とし、その保全を求めるものであることは、申請人らの主張自体から明らかである。
二国立大学とその学生間の在学関係に関する紛争についても、私立大学における場合と同様、基本的には私法上の市民債権契約関係として、民事訴訟手続(保全訴訟手続を含む。)によつて救済を求め得ると解されるとしても、その在学契約関係は、学生と大学設置者(学校教育法二条参照)との間に生ずる法律関係であり、大学自体が右契約関係における権利義務の主体となるものではないと解すべきである。
三けだし、大学は国公立であると私立であるとを問わず、学生の教育と学術の研究とを目的とする教育研究施設であつて、その設置目的を達成するために必要な諸事項については、法令に格別の規定がない場合であつても学則等によりこれを規定し、実施することのできる自律的包括的な権能を有し(最高裁昭和四六年(行ツ)第五二号、昭和五二年三月一五日第三小法廷判決)、この意味では組織体の一面を有しているが、大学自体は権利の主体となることのできる地位、すなわち、自己の名で権利を取得し、義務を負い、その義務の履行のためその名で有する財産につき強制執行を受ける地位を有さず、権利の主体となる地位は大学の管理を行い経費を負担する大学の設置者(学校教育法五条参照)である国立大学においては国、公立大学においては地方公共団体、私立大学においては私立学校法三条に規定する学校法人に属するものである。
四従つて、国立大学である被申請人が法人格のない社団または財団(講学上の権利能力なき社団または財団)として在学契約関係における権利または義務の主体となることを前提とする本件仮処分申請は、その余の点につき判断を加えるまでもなく不適法であるから却下を免れない。ちなみに、申請人らは当庁昭和五四年(ヨ)第三六七四号仮処分申請事件として別途に国を被申請人として本件同様の仮処分申請をなしたことは、当裁判所に顕著な事実である。
(大久保敏雄)